【ちょっとした日常】 「はぁ〜疲れた〜」 四代目火影として日々忙しく業務をこなしているミナトは、家に帰り着くなり玄関にへたり込んだ。 「火影ともあろう者がそんなみっともない格好しなさんな」 ミナトの頭の上から降ってきた声に顔を上げれば、しゃがみ込み自分の顔を覗き込んでいる妻のクシナの顔があった。 「おかえり」 指先で額を弾かれ、ミナトは疲れた顔を緩める。 「ただいま」 「とーちゃ」 クシナの後ろから小さなナルトが現れ、しっかりとは言えない足取りでミナトに近づくと、ぺちゃりとその側に座り込んだ。その姿にミナトは目を柔らかく眇める。 「ナル君」 ナルトにも「ただいま」と声を掛けようとしたミナトは、思わぬナルトの行動に声を無くしてしまう。 小さく温かな手の平がミナトの髪に触れ、優しく撫で始めたのだ。 「いーこ、いーこ」 ミナトの頭を撫でながら、ナルトは回復の呪文を唱えるようにそんな言葉を紡ぐ。 その突然の行動にミナトは驚き、クシナはふっと口元を緩めた。 「ナルト、お父さんの疲れを取ってあげてるんだ?」 「んっ」 クシナの言葉にナルトは大きく頷く。怪我をした時にミナトやクシナが頭を撫でて慰めてくれたのを覚えていたナルトは、同じように父親の頭を撫でているのだ。 「なる、これげんきでるの。とーちゃもげんきでるってばよ」 「そうだね」 父親の頭を撫でるナルトの頭を、母親であるクシナが撫で、その感触にまたナルトは顔を綻ばせる。 その優しさの連鎖に、ミナトの瞼の奥がじんわりと熱くなった。 「ナル君、ありがと」 頭を撫でるナルトの手を取り、ミナトは自身の頬に当てる。柔らかく温かなその感触は、疲れを癒すだけでなく元気にもしてくれた。 「ナル君のおかげで元気出たよ」 そう告げるとミナトは立ち上がり、ナルトを抱き上げて肩に担いだ。バランスを取りながら父親の頭にしがみついたナルトが、可愛らしい笑い声を上げる。 「お腹空いたね。今日のごはんは何かな?」 「こげたはんばーぐだってばよ」 ミナトの疑問に元気な声でナルトが答え、 「ナルト、一言よけい」 膨れた顔をしたクシナがミナトの横を歩く。 そんなちょっとした日常に幸せを感じ、四代目火影は一人の父親として口元に柔らかな笑みを浮かべた。 あったかもしれない幸せの縮図2。2007年のうずまき親子フェスティバルにて投稿させて頂いた物です。彩時記の方に載せていましたが、記事が流れたのでこちらの方に収納。クシナさんの性格がよく解らない時に書いたので、口調が荒っぽいですが(苦笑)そういうことなので、勘弁してやって下さい。 サクヤ@管理人 2007.11
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