【愛しい愛しい愛しい君】




「父ちゃん」

 明るい金の髪を軽く跳ねさせながら、太陽のような少年が駆けてくる。
 自分のことを呼びながら。

「ん、どうしたの?」

 胸の中に飛び込んできた彼の、柔らかなその髪を撫でながら、彼の言葉を待つ。
 彼が話すのはいつも他愛ない話。
 新しい術を覚えたこと。ライバルでもある仲間との些細なケンカのこと。もう一人の仲間の可愛い女の子のこと。今日も遅刻してきた担当上忍のこと。

 相づちを打ちながら、その表情を見遣る。
 くるくると変わる万華鏡のようなその鮮やかな表情に、いつも、いつだって、目を奪われる。

 自分を見上げる蒼い瞳。
 澄んだ青空のようなその彩。

 胸が痛い程、愛おしい色。

 けれど、それらはすべて――自分の中の幻想。

 彼岸の果てで見る夢。
 なくしてしまった夢。

 実際の自分には彼を抱きしめる腕など無くて。
 かける声さえ無くて。

 自分の大切なその存在は――お調子者だけど、明るくて、強くて、優しくて――だけど、なによりも、悲しみを堪える事をまず最初に覚えさせられて。

『ごめん…』

 小さな手が、縋るものの無い手が、自身の胸を押さえて堪えるその姿が、泣き出せず食い縛るその唇が――無い胸を痛ませる。

『ごめん……ナルト』

 繰り返す謝罪は虚空へ吸い込まれる。

 許してくれなくていい。
 許されるなんて思っていないから。

 けれど、これだけは許してほしい。

 君を想う気持ちだけは――どうしても止められないから。

 愛しい、愛しい、愛しい――君。