【らいおんハート】



「ナル君、あのね。パパはナル君のことが世界で二番目に好きだよ」
 言いきかせるように言う父親に、ナルトは首を傾げながら彼の言った言葉を繰り返す。
「二番目だってば?」
 無垢な瞳で見上げられ、そう問い返されれば、少しだけ四代目の胸が痛んだ。
「…うん。一番目はお母さんだから」
 それでも、息子が大きくなったら最愛の妻のことをこう言い聞かせるんだと昔から心に誓ってきた父親は、少しだけ顔を引きつらせながらも言い切った。
 父親の言葉にナルトは合点がいったように頷くと、
「俺も母ちゃんが一番好きだってばよ!」
 ニパッと、それはもう満面の笑顔を浮かべて、父親と同じ言葉を口にした。
 言われた方の四代目はと言えば、これ以上ないほどの愕然とした表情を浮かべたかと思うと、今にも泣き出しそうに瞳を潤ませ始める。
 自分が一番じゃないと言っても、もしかしたらナルトは自分のことを一番好きだと言ってくれるのではないかと、心の何処かで甘いことを考えていたのだ。それなのに、そんな素振りなど欠片も見せず、自分と同様に母親が一番だとナルトは言う。それは当然と言えば、当然なのだが──
「う…嘘! 今のなしっ!! パパは世界中で一番目にナル君のことが好きだからっ!!」
 四代目は慌ててナルトに訂正を申し出た。
「無理しなくていいってばよ」
 けれど、ナルトは父親が自分に気を遣って言ってるのだと思い、全然気にしていないという口振りで応える。相手が母親では自分が負けるのは当然だと、子供心でも理解出来た為に、実際、気にしていなかった。
「無理じゃないから! ナル君のことが一番だから! だからパパをナル君の一番にしてっ!!」
 必死で泣きつく父親に唖然としたナルトは、それでも困ったように笑うと、
「俺も、父ちゃんが一番だってばよ」
 そう言って、憧れでもある四代目火影の父親を安心させた。
 本当は、やっぱり「一番」と言ってもらえたことが嬉しくて、ナルトは父親の大好きな大好きな笑顔を浮かべると、その身体にキュッと抱きつく。
 抱きつかれた四代目もまた嬉しくて、今度は違う意味で目頭を熱くしながら、小さな身体をちゃんと抱き締めた。
(奥さん、ごめんなさい)
 心の中で深く深く元の一番である妻に謝りながら。

 ──だって、やっぱりこの子が一番愛しくてしょうがない。










『いつかもし子供が生まれたら〜世界で二番目に好きだと話そう〜♪』
……四代目、挫折(笑)。

サクヤ@管理人
2004.11.18UP